Windy.comを使って美しい朝焼けや夕焼けを予測したい
Windy.comで事前に調べた雲分布を利用して、美しい夕焼け(朝焼け)空の予測に挑戦します。ここで言う美しい夕焼けというのは、広がる雲が赤・オレンジの光に照らされているような空です。実際に予測するには美しい夕焼けが起こる条件を知っている必要がありますが、一体どんな条件が揃ったときに美しい夕焼けが見られるのでしょうか。今回は実際に夕焼けが見られた時に保存しておいた雲分布などを利用しつつ、その条件とは何か考察していきます。
Windy.comを利用する
美しい夕焼けを狙って撮るには、美しく焼ける条件を明らかにする必要があります。その条件とは何かを考えてみると、常識・経験・直感から、
- 雲が空一面を覆っている。
- ただし太陽の沈む方向の地平線近くの空は晴れている。
- 光の通り道を遮るものはない。
などが考えられます。ですから雲の位置・高度・厚さなどを調べれば美しく焼ける条件が分かりそうですが、具体的に雲がどうなっていれば良いのか見当がつきません。そこで私は美しい夕焼けが撮れた時の雲分布のスクリーンショットを保存しておき、雲分布に特徴的なパターンが無いか後から考察することにしました*1。この時雲の分布等の予報を得るために利用したのがwindy.comというウェブサイトです。
windy.comに飛ぶと風を可視化した粒子アニメーションのマップが映し出されます。 右側の項目から雲の高度ごとの分布なども見ることができますが、デフォルトでは一部レイヤーがOFFになっていて選択できません。このままでは不便なので、夕焼けの予測に役立ちそうなレイヤー(上層雲、中層雲、霧、雲頂)をONにして項目から選択できるようにしておきます。
試しに雲のレイヤーを表示します。マップの色は覆われる雲の割合を表現しており、黄色(雲0%)<灰色<白(雲100%)の順になっています。雲の割合を知りたい場所をクリックすると、その地点のパーセントが表示されます。
分布を見られるようになったところで夕焼け撮影に出かけ、日没時刻頃の雲分布のスクリーンショット(雲、上層雲、中層雲、下層雲、雲頂、クラウドベース、視界)を記録したいと思います。しかし、どの程度の範囲までスクリーンショットに収めればいいのかわかりません。予め考慮すべき雲の範囲に当りをつけておく必要があります。一体何km先の雲までが夕焼けに関わる雲なのでしょうか。
非常にラフな推測ですが、地球のジオメトリから考えて、太陽光が大気圏に入ってから高度10kmにある雲の下面に当たるまでに通過する距離はおよそ370km(マゼンタの線)。時間帯や雲の高度によってはもっと短いと思いますが、最長でこれだけの距離を太陽光は通過してくると推測できます*2。したがって考慮すべき雲分布の範囲は、マージンをとって観測地点から日の入り方角へ向かって400-500km先まで程度と考えられます。
よって雲分布は本州の1/3が収まるくらいの範囲でスクリーンショットをとるのが良さそうです。また出かける前には日の入りの方角を日の出日の入時刻方角マップあたりを使って把握しておきます。さて準備が整ったところで夕焼けが見られるチャンスが巡ってきました。早速実践してみます。
5月末に見た夕焼け
夕焼け写真
今回は山形県某所から夕焼けを撮影しました。空全体が赤紫色に染まる夕焼けに遭遇したのは久しぶりです。撮って出しでこの色です。こんな空は年に数回しかお目にかかれません。
雲分布などのスクリーンショット*3
この時に記録したスクリーンショットはこちら。これを材料にして、夕焼けの美しさに寄与している要素を探していきます。
雲
この時期の太陽の沈む方角は北西方向でした。山形県の北西300kmほど先の日本海上は晴れていたようです。 この隙間から太陽光が差し込んだのでしょうか。次は高度ごとの雲の様子を見ていきます。
上層雲
上層雲は手前の空一面をがっつり覆ってしまっています。こんなんで大丈夫かと思いましたが、この高い雲がキャンバスの役割を果たすのでしょう。
中層雲
北西100km以遠の中層雲はほとんどなかったようです。このおかげで雲間から差し込んできた太陽光が遮られずに届いたのでしょう。
下層雲
下層雲もほとんどなかったようです。
雲頂、クラウドベース
雲頂は8200m付近、クラウドベースが7500m付近だったようです。このくらいの雲の厚さがちょうどいいのでしょうか。
視界
あれだけ曇っていた割に視界はそこそこ良好だったようです。
夕焼けの条件
今回得られた知見を総合して夕焼けに寄与した要素をまとめると、大雑把にこんなものだと思います。
- 太陽の沈む方向(200-400km?先のある程度の領域)が晴れている。
- 観測地点周辺(0-200km?先のある程度の領域)に上層雲が広がっている。
- 太陽の沈む方向には中層雲や下層雲がほとんどなく光が遮られない。
- 上層雲の程よい厚さ(1000m以下?)。
- 太陽の沈む方向や観測地点周辺の視界が良好で(10km以上?)雲や霧などで光が遮られない。
このようにしてwindy.comの予報を参考にすれば、ただ空を眺めて夕焼けを予想するよりも打率が上がるのではないでしょうか。私は今後も美しい夕焼けが見られる度に雲分布から条件を考察して、同様にまとめて行くつもりです。何度も繰り返していけば、もう少しはっきりしたことが言える日が来るかもしれません。
最後に、当然ながらここまで書いてきたことは私の考察に過ぎず、最後に示した夕焼けの条件の妥当性を何一つ保証できません。かなり物事を単純化して考えてきたので、間違いを多々含むと思います。仮定・認識・論理展開に誤りがあるなどといったご指摘がありましたらコメントいただければ幸いです。
*1: 本気でやるなら雲分布と夕焼け写真のセットをたくさん用意して何かしらの相関を炙り出すのが出来れば面白そうだが、そこまでやる気はないので暇な誰かがやってください。
*2:推測するにあたっては、地球半径を6372km、対流圏の厚さを10km、大気での光の屈折を考えない、地球に凹凸がない、雲が高度10kmに広がっているなどと色々と仮定を置いています。
*3:windy.comのTerm of Useを読む限り、スクリーンショットを貼り付ける場合、ソースを明示して(ex. 'Source:Windy.com')、このようにwindyのwebsiteへのハイパーリンクを付ければ良さそうですが、もし問題があればスクリーンショットを削除します。